平成27年7月25日、「遊花一日 夏期大学」テーマ『美し国 日本』デモンストレーション&ワークショップが開催されました。
華道総司所会員限定企画として「遊花一日 夏期大学」が大覚寺内華道芸術学院において開催され、230名余りの方が受講されました。
この日の早朝、寺内にある日本現存最古の林泉・大沢池では、「観蓮節」が行われ、中国古来の消夏飲酒法である象鼻杯がふるまわれました。
蓮の葉に酒を注ぎ、その酒を、長い茎の先端から飲む その様子が象の鼻のようであることから名づけられたもの。とても優雅な楽しみと言えます。接待役は、千早の装束を付けた嵯峨御流会の先生方です。
遊花一日夏期大学、会場である華道芸術学院1階ロビーには、担当講師6名でいけた迎え花「豊葦原瑞穂の国」の大作。(暖竹・伊吹・ルトジ)。また、1階2階の廊下には15~16作のガラス器を用いた心粧華。
午前の部は、テレビにも度々出演しておられる吉村作治先生の講演。テーマは、「世界遺産・古代エジプトから見た蘆の文化」で、エジプトの古代紙パピルスや、葦に関する話、また16弁の菊と蓮との関連性について、そして古代エジプトもそうであったように日本人が持つ<自然を神として尊ぶ心>こそ未来の地球に必要な<自然との共生>の心ではないかという、興味深い話題が次々と語られ、1時間があっという間にすぎた講演でした。
午後は、いけばなデモンストレーション。 テーマは「豊葦原瑞穂の国」を、服部孝月 華道企画推進室室長と私が担当しました。
服部先生のデモは、「葦一色のいけかた」。嵯峨御流奥伝の伝書には、「我が国の未開時代は、いまだ国をなさず、一面の青海原に初めて一つの葦が生じ、それが次第に蔓ってついに大いなる島となり、豊葦原磤馭慮島(とよあしはら おのころじま)動きなき大和島根と称するようになった」とあり、葦はわが国の源をなすものでみだりに取り扱うことを禁じています。この花をいけるときは、香をたき、室を清浄にする、などの最高の配慮をすることが心得事として書かれています。デモンストレーションに先立って、1階講堂2階教室の各会場には 香を焚いた香炉が柱ごとに置かれ、室を清浄な香で浄めて頂きました。
古事記・日本書紀の神話と神々の話しを交えながら、いけあげられました。
続いて、私のデモは、真塗の花衣桁を用いて、葦のある風景画を描くように。
下に置いた水盤には、様々な種類の葦・パピルス・しゅろがやつり・蒲・燕子花・
河骨・菱・名古曾蓮など。
向かって右の懸け花は、葦の新芽が川の流れのなかで茎を伸ばした、まるで蔓のよ
うな姿のもの。大覚寺に咲く槿を添えて。
向かって左の懸け花器は、煤竹 銘「杖頭」 久田宗也書付。花は楓と仙翁。
釣り籠器は玩々斎作。大沢池の白蓮。
服部先生と私のそれぞれのデモが終わり、次に二人同時に荘厳華をいけ
ました。荘厳華は、神仏へ備える立て花形式の花態です。
荘厳華「真」花態=金明竹・夏櫨・キキョウラン・擬宝珠・鶏頭・女郎花・
キキョウ 他。
荘厳華「行」花態=アナナス・ナナカマド・擬宝珠・紫陽花・鉄線 他。
ワークショップは、暖竹・パンパス・アンスリウム・クッカバラ・スモークグラス
を用いて、受講生それぞれ思い思いの取り合わせで、「祈り花」「空相の花」を
いけていただきました。
今回の「遊花一日」では、テーマを古代の神話に求め、花を愛する人たちとともに、テーマと花にひととき無心になって遊ぶ心持ちで楽しく過ごしていただきたいと思い、企画したものです。これからの社会で、何を大切にしなくてはならないかということも、花を通じて一人一人が考えて頂くきっかけになれば幸いです。
この企画を遂行するに当たり、多くの方々の御協力を頂きましたことに感謝申し上げます。