11月9日。I.I.神戸支部50周年記念でのデモンストレーション。
11月9日。いけばなインターナショナル神戸支部創立50周年記念祝賀会が神戸ベイシェラトン ホテル&タワーズにおいて開催され、お祝いのデモンストレーションをさせていただきました。
父辻井博州が、50年前、支部創立の際にデモンストレーションをさせていただいたとの事で、以来何度もお招きを受けてデモをしたご縁により、この度わたくしにお声がけくださったと伺いました。ご縁を大事に思ってくださることに敬服し感謝しています。50年もの間会員とのご縁を繋いでこられた神戸支部へのお祝いのため、心を込めていけさせていただきました。
作品
①御所車の作品をお迎え花としていけておき、嵯峨御流の紹介と、大覚寺、及び大覚寺と源氏物語の縁をお話ししました。
大覚寺と『源氏物語』の縁(えにし)。
平安時代、風光明媚な嵯峨野をこよなく愛された嵯峨天皇は、この絶景の地に嵯峨離宮を造営し、王朝サロンを展開されました。いけばな嵯峨御流はこの離宮に源(みなもと)を発しており、仙洞御所から大覚寺となった貞観十八年(八七六)以来、王朝文化の薫りを守り続け、現在(いま)に伝えています。
嵯峨天皇の皇子「源融(みなもとのとおる)」は光源氏のモデルの一人と言われており、また物語18帖「松風」などに大覚寺が出てきます。
花材は松と懸崖仕立ての菊。
松は、長寿また永遠の若さのシンボル。厳寒に緑を保つことができるため、古来より特別で神聖な木と考えられて、お正月にはまず松を立てて、歳の神をお迎えします。
ここでは懸崖仕立ての菊を使っています。菊は、奈良時代末から平安時代初めにかけて中国から伝えられ、平安貴族を魅了した花で、邪気を払い長寿を授ける霊力を持つ、という伝説があり、長寿のシンボルです。
大覚寺には、11月30日まで門外不出の嵯峨菊が境内に数百鉢並んで美しいです。
②貝桶の作品
貝桶は、平安時代の貴族が貝合わせに使う絵が描かれた蛤の貝殻をしまっていた入れ物です。二枚貝の蛤は 貝殻が一対になっており同じ貝ならピッタリあう。貝合わせはこの蛤貝の一対を見つける遊びであり、これが「良い縁」や「結びつき」を象徴しているので、伝統的に縁起の良い模様として慶事のお着物などにも描かれます。
いけた花は、柿、百合、如意に見立てたサルの腰掛け。
この花材の取り合わせで
【百事如意】を表現しました。
意味は万事が意のままであること。「百」とは百合根(ゆりね)の一文字からとった「百」。数のきわめて多いことを指します。「事」(じ)とは、柿(し)の音読みの音通。孫悟空の如意棒でおなじみ、「すべては思いのままに」という意味の「如意」は、その姿が縁起が良いとされるキノコの霊芝に似ているサルノコシカケ。これらをあわせてできた“パワーワード”です。
「すべてが思い通りになりますように」。ここに集う皆様が幸せでありますように!
③文人華の画題『異郷三友(いきょうさんゆう)』
異郷とは、互いに違う郷(ふるさと)
の意味で、旅行や転勤、また何らかの理由で異国に赴いている人を意味し、その地において、生まれ育った国の異なる三人が、互いに友としてぬくもり深い交わりを持つという意味です。
この題意を表すために産地の異なる三種(以上になりましたが!)の花や実を出合わせて、ぬくもりあふれる交友を表現します。
冬瓜。原産地はインドや東南アジア。
夏に収穫しても冬まで持つことから冬瓜と呼ばれます。
ザクロ原産地は西南アジアや中東の乾燥地帯。種が多いことから、ギリシャ・ローマ時代には「豊穣のシンボル」とも呼ばれました。
ドラゴンフルーツ原産地は、メキシコや中央アメリカ、南米北部などの中南米の熱帯雨林です。
仏手柑インド原産の柑橘類。
地湧金蓮(チユウキンレン)原産地は中国雲南省のバショウ。またまだ日本では貴重品。地面から湧いてきた金色のハスを意味します。
英名はgolden lotus banana
バンダ。東南アジア原産。この着生ランの属名バンダのルーツは、インドのサンスクリット語のバンダカが、まとわりつく、という意味からつけられたとの事。
④深山の景
日本の美しい山の風景。深山は深い山、はるか彼方に聳える山から、地中に蓄えられた水が浄化されて地上に湧水となって出てくる、その水の発生の風景でもあります。水は山から出て森や林を作り野原をめぐり伏流水の流れも取り込みながら田畑を潤し、その間人の暮らしと密接に関わり、池、溜池の風景も見られる。全ての水の流れはやがて大河に集まり海へと流れていきます。海は水の流れの終点でもありまた始まりでもあります。海水は水蒸気となってまた山へと巡り雨や霧に姿を変えて深山に降り注ぎます。その雨の雫は地中深く染み込んでやがて濾過された清水が地表へ現れる、この水の循環こそが風景を美しく保ちます。
神戸では深山といえば六甲山最高峰でしょうか。
貝塚伊吹、ドウダンツツジ、カエデ、リンドウ、ツツジ、カラスウリ。
⑤令和7年度の新年御歌会始めの御題「夢」を表現した作品。
花器は嵯峨御流が夢に因んで制作し、全国106司所の門人の方がこれを用いて御題花をお正月花にいけています。
夢という漢字の図形の由来には諸説ありますが、一説に、草冠は並びはえた草。その下に人の目、その下の夕は月すなわち夜の事で、「夢は夜のとばりに覆われてあたりがはっきり見えなくなる状況を示す図形である」とされていますが、おめでたい意味を込めて、わたくし流に未来への期待を表す解釈で、「夢とは草むら(大地)から未来を見ている目」ととらえて、作品に表現しました。
ドラセナコンシンネレインボーは草むら、ピンクッションは未来を見つめる目です。
おわりに、
I.I.のモットーであるfriendship through flowers
のもと、神戸支部ますますのご発展をお祈りします。