10月6日。読売新聞社大手町スクールでの講演。
大覚寺ご開創1150年を記念して、その前年に当たる令和7年に、東京国立博物館において「特別展『旧嵯峨御所 大覚寺-百花繚乱 御所ゆかりの絵画-』」が開催されます。
主催は
旧嵯峨御所大本山大覚寺。
東京国立博物館。
読売新聞東京本社。
この特別展「通称 大覚寺展」(令和7年1月21日から3月16日)の関連講座として見どころがもっとわかる、待ち遠しくなる講座として、読売新聞東京本社内 大手町スクールで、合計5回の講座が企画されています。
第4回目がわたくしが担当させていただいた講座「嵯峨天皇のいけばな」でした。
次回はお写経について、11月30日(土)14:00〜15:30喜和田龍光様のご講演とお写経です。お申し込みはこちらからどうぞ。
https://www.ync.ne.jp/otemachi/kouza/202410-18012205.htm
10月6日は、50分間の持ち時間をややオーバーして、前半はパワーポイントで「自然への畏敬の念と草木を愛しむ嵯峨天皇の大御心」をテーマに、お話ししました。後半は、旧嵯峨御所の雅な大覚寺の風景をデモンストレーションでご覧いただきました。
1.景色いけの原点でもある、1200年以上姿を変えずに存在する日本最古の庭池「庭湖の景」
2.池に浮かぶ竜頭鷁首船を花器にしたものに、紅白の蘭。
3.源氏物語にも出てくる大覚寺と、大覚寺が鎮座する嵯峨野の野辺の風情を描写「野辺の景」
4.お迎え花として、「深山の景」「晩秋をテーマにした瓶花」
講演内容は、
1200年前、大沢池に咲く菊を手折られて殿中の瓶にいけられ、可憐な野菊にも等しく備わっている生命の尊さに感動された天皇が、「爾今 花を生くる者は宜しく之をもって範とすべし。」と仰ったことから、この嵯峨天皇の大御心を嵯峨御流の理念として、以来連綿と伝え続けていること。
嵯峨天皇は天皇のお立場で自ら花をいけられた初めの御方であること。
嵯峨御流は、1人の家元が興した流派ではなく、嵯峨天皇のに始まり、旧嵯峨御所に様々な流派や花道家が仕官し合流してできた、大きな流れであること。対外的に、昭和50年から嵯峨御流を流名としていること。
嵯峨御流には、嵯峨天皇が愛された自然の風景をいけばなで表現する「景色いけ」という当流独自のいけ方があること。命の源は水であり、連続した水の流れが織りなす自然環境と人との調和によって風景が生まれること。
守りたい自然の原風景、また取り戻したい心象風景を、景色いけの理念と型をもとに身近な風景を美しくいけばなで表現し、自然に関心を持つことから環境保全の心を広めることを、今までも、これからも嵯峨御流はやっていくこと。
地球が気候危機に直面している今、SDG’sの到達目標の一つである世界の環境問題に対して、日本人として世界の人々とも絆を深めながら、残すべきもの守るべきものを見極め、次世代につないで、自然環境を守りたいという心を育てる。人々が安心して暮らせる平和で美しく豊かな世界を実現する、これらを目標に嵯峨御流は地道に、全国106司所と一丸となり取り組んでいくこと。
など。以上要約。
818年、弘仁9年、疫病に苦しむ国民の姿に心を痛められた嵯峨天皇は空海のおすすめにより旧嵯峨御所であった今の大覚寺で写経を書いて祈りを捧げられた、その大御心をいけばなで表すことが嵯峨御流の信念です。大覚寺の歴史とともに、これからも命の大切さと、自然と人の調和により平和がもたらされることを、花で伝え広めて行きたいと、今日の講演にご参会の皆様や読売新聞社ご関係の方々の出会いを通じて、わたくし自身思いを深めることができた貴重な経験でございました。