新緑 ー祇王寺ー 5月7日
5月の連休明け。立夏を迎えて新緑が一層鮮やかな祇王寺を訪ねました。
楓も苔も、生き生きとした生命力に満ち溢れています。
新緑を見ると思い出す、植治 次期12代 小川勝章さまの美しい言葉で綴られたエッセイを、『茶道雑誌』2018年5月号より引用させていただきます。
以下、『茶道雑誌』2018年連載エッセイのテーマ「御庭歳事記ー皐月ー」より引用。
5月号「受け継がれる新緑」
植治 次期12代 小川勝章
是非この季節に、お出掛けくださいませ。
秋に訪れになったお庭に、今一度。
紅葉の名所は、必ずや新緑の名所です。
あの時、心惹かれた楓とも、久方ぶりの再会です。
私たちが及びもつかない樹齢にもかかわらず、いきいきとした生命力にあふれています。
(中略)
是非この季節にご覧くださいませ。
松などの針葉樹、樫などの広葉樹、常緑の新緑を。
年中不変、然に非ず。緑の移ろいが見て取れます。
薄黄色のもの、乳白色のもの、赤みを帯びたもの。
日に日に成長しつつ、色目も変容し、多様な緑に出会えます。
十人十色ならぬ、十緑十色とでも申しましょうか。
それらが一際輝くのには、常緑樹ならではの訳がございます。
新たな葉は枝先に芽吹き、枝の懐には昨年までに成熟した葉が留まる。
葉にも先輩と後輩との関係が存在するかのよう。
色濃く成熟した葉には、まるで新緑を導くように、一層引き立てる深みがあります。
そして成熟しきった葉は、気温が上がり始める頃に落葉を始めます。落葉と時を近しくして、若葉は成長するため、常緑の風情は保たれます。
舞い散る葉と力漲る若葉。
人知れず、世代の受け渡しが行われています。
世代を超えて、共存を続ける落葉樹。
世代を交代させつつ、緑を保ち続ける常緑樹。
「新緑」に秘められた奥深い営みは、受け継がれ続ける伝統そのものではないでしょうか。
是非、お出掛けいただき、ご覧くださいませ。
京都には新緑の名所が沢山ございます。
これからも、きっと受け継がれ続けることでございましょう。