我逢人(われひととあうなり)
今月の月刊『嵯峨』、門跡様の御言葉は「我逢人(われひととあうなり)」。「世の中は常に人と人との関わり合いです。私達は人との関わり合いの中で悩みます。しかし、人との関わり合いの中だからこそ、救われることもあるのです。」と語られています。
さて、先月 大阪高島屋で、第47回日本いけばな芸術展が開催されました。その会場で当番をしていた嵯峨御流の先生のところへ、ある方がこられて「嵯峨御流のお花を習いたいのです」と仰しゃいました。先生は、ご住所などをお聞きし、最寄りの地域にお住まいの先生にすぐさま取次いで下さり、その方は念願の嵯峨御流を習う事になりました。このように、出逢いは、あらゆる場にあって、人と人が触れ合うことで形になっていくものだと思いました。
日常生活においては、心配事やくよくよ悩むことは少なくありませんが、そのような心の状態でも気持ちを切り替えて良い場へ出かければ、思いがけない良い出逢いがあるものです。昨今、いけばなを習う方が少なくなった、という嘆きの声をよく耳にいたしますが、先生は家で待つばかりではなく、一人でも多くの方にこちらから出逢いに行く心持ちで、明るく外へ出て人と話してみると、意外なつながりが生まれるかもしれません。門跡様のお言葉の続きは、「全ての始まりである出逢いを、否定的でなく、前向きに見ていくことが大切です」と、人にとって出逢いの尊さを教えて頂きました。「我逢人」このお言葉から、私が改めて実感したことは、意志と行動は意外性と出会いを生み出す創造活動だということです。
今月のいけばなは貝塚伊吹・古木・ナナカマド・富貴草・菊
家を出て戸外の自然にふれ、時には足を延ばして大自然の中へと身を置くことで、心の垢を払拭する。このような心境で深山の景を想い花で表現しました。