いけばな嵯峨御流

うめだ阪急 コンコースウィンドー迎春花2021

12月27日から1月13日までうめだ阪急コンコースウィンドー迎春花2021が展示されています。
JR大阪駅、阪急阪神梅田へお越しの際には、ぜひご覧くださいませ。
嵯峨御流100名が力を合わせて、26日の夜にいけこみをしました。
今回は、難敵に打ち勝つ未来へのメッセージを、いけばな作品で表現しました 。

 

1号
『一陽来福( いちようらいふく) 』
迎春花に込めた想いは、人々が一つになる世界の実現のために」新しい日常の中で迎える令和三年のお正月は、暮らしを考え直すきっかけになれば、との想いから見ているだけで元気になれる黄色の壁に、床の間の原点である押板を設えました。太陽が昇ると素直にうれしく、福がやってくる兆しを感じます。改めて自然の大切さを気づき、お互いに感謝の気持ちをもって一つになってほしい、という願いを込めて、“悪いことが続いた後には幸運が開ける”という意味の一陽来復(いちようらいふく)をもじって『一陽来福 』 を表現しています。
花材のオモトは、株が大きいことから「大本(おおもと)」の意味を込めてオモトといわれ、また、葉が常緑でいつも青いことから「万年青」と名付けられています。常緑なので長寿をあらわし、深紅の実が子孫繁栄をあらわすことから、松竹梅とともに祝儀花の一つとされています。
この生け方は、嵯峨御流に伝わる祝儀花「万年青 七五三(しめ)の伝(でん)」です。
向かって右に七枚を縦姿、左に五枚を横姿、両方の株をつなぐ足元に三枚をいけて、全体として「天・地・人」の姿を構成しています。
壁一面を彩るのは、まばゆいばかりの黄色、すなわち陽(よう)の色です。何もない広々とした余白の空間が余分なものを覆い隠し、テーマを浮かび上がらせているのです 。

掛軸 紅唐紙 「四海波平龍眠穏」 尋牛斎宗也
花器 銘「泰鳳」菊花御紋・鳳凰蒔絵 八角足付(天皇陛下御即位・新元号令和改元記念として好む)
花 万年青「大象観」
敷板 螺鈿

 

2号
『御題「 実 」』未来の人々に夢を託す思いを込めて

天皇がお催しになる歌会を「歌御会」 といいます 。
現在は皇族だけでなく広く国民からも和歌を募り、毎年一月に歌会始が行われています。大覚寺が皇室と深い関わりを持つため、いけばな嵯峨御流では歌会始の御題にちなんだ「 御題花 」を毎年謹挿しています。
令和三年の御題は「実」で、その旧字「 實 」にある貫は 、紐で綴り合わせた財宝を示し、豊かな供え物が満ちているという意味になります 。転じて、充実していることを示し 、植物の実りの意味になりました 。この作品では南天と、命の根 が語源の稲を実りの象徴として、未来の人々に実(夢)を託す想いを込めています。南天は「難を転ずる」とも、また成就に通じる「成天」とも呼ばれお祝いの席にふさわしい植物です。

 

3号
『高砂』安寧に過ごせる時の実現を目指して

能楽「 高砂 」は 雌雄の老松の精が相生の老夫婦の姿で砂浜に現れます。相生とは、相ともに生まれ老いるまで 、の意味で夫婦の和合や、国家の繁栄を寿ぐことがこの楽曲のテーマとなっています。「千秋楽は民を撫で、万歳楽には命を延ぶ相生の松風 颯々の声ぞ楽しむ」という言葉で結ばれることから、大切な人とともに、安寧な時を過ごせますように 、という想いを込めています。

主な花材
赤松 黒松 福寿草

 

4号
「『辛丑好文』努力を続ける人々に感謝して」

干支とは十干十二支の組合せであり、令和三年の干支は 辛丑 。そこから発想し、幸せを運ぶ 「赤べこ」と、牛にゆかりが深い菅原道真公がこよなく愛した梅を華やかに取り合わせました。梅の別称「好文」は、晋の武帝の「学に親しめば梅開き、疎かにすると梅開かず」という中国の故事に由来します。努力を続ける人に感謝の気持ちを込めています。

主な花材
梅 柳 サボテン シンビジウム 葉ボタン

 

5号
『鶴亀』永遠の時を願う人々のために

鶴は千年、 亀は万年の長寿と云われ 、二つの長寿のシンボルを大きな円の形におさめ、新しい年のはじまりを知らせる日の出をイメージしました。鶴と亀は古来より、 良き事を寿ぐときに用いられる吉祥文様にも使用され 、夫婦円満や金運上昇の縁起ものとしても知られています。これからも末永く、 平穏な世界が続いてほしい、そのような想いを込めています。

主な花材
鶴:ツゲ ソテツ オーガスタの葉 ビロウヤシ       
亀:ビカクシダ ハラン

 

6号
『慈光』輝く献身者への感謝を込めて

医療従事者をはじめ、献身的に働く人たちへの感謝を込めて、薬師如来の姿と力を荘厳華で表現したいと思いました。薬師如来が手に持たれる薬壺にも、医薬の仏としての特徴が表れています。薬師如来が司る瑠璃光の色を背景に、その体から放たれた輝く光を海松などで表現しています。

主な花材
南方竹の根 落羽松の気根 ユッカ タビビトノキの花 胡蝶蘭 海松 チャボヒバ

 

7号
『兆』輝く未来の実現への願いを込めて
いけばな嵯峨御流ゆかりの大覚寺にある大沢池。
その池に浮かぶ舟の船首には「龍頭鷁首」 が飾られています 。龍は水の上でも思い通りに進むことができ 、
鷁 は海上を吹く風にも負けないという伝説から、水上の安泰を願って備えられています 。これらの伝説の霊獣は、瑞祥すなわちめでたきことの象徴として扱われています。優雅に池を行きかう舟に見立てた花器には品格ある植物をいけることが伝承されています。人の心の持ちようで、幸多い輝く未来は実現できることを信じて。

主な花材
寿松 カトレア

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