5月の花 月刊「嵯峨」5月号
爽やかな風を誘う芭蕉の葉を主材として、五月晴れのブルーのデルフィニウムを取り合わせてみました。
門跡様が選ばれたお言葉「布施」について思うこと。
いじめに遭って以来、人をおびえ心に病をもった小学生の子供を、両親が思いきって子供一人でお遍路に行かせたところ、数か月後に戻ってきたときには、真っ黒に日焼けしてはきはきと物を言い、元気な子供になって帰ってきたそうです。
お遍路の人から差し出された「無財の布施」を受け続けて旅をする間に、子供は、おびえなくてもよい大人がこの世の中にはいるのだ、という安心感を得ることができたという事です。
四国の人々は、お遍路に「無財の布施」をなさるそうです。優しい言葉をかけ、笑顔で接し、食と宿を施すことが、強制的でなく、請われてしているのでもなく、ひたすらお遍路に差し出されつづける無償の愛情。
私自身がこの「布施」から学ぶことは、日常生活において、お金がなくても、物がなくても周りの人々に少しでも喜んでいただける方法がある、ことに気付くことです。ちょっとした心遣いや、挨拶と笑顔をこちらから発することから和は生まれ、自分の心が幸せになるのですね。
ところで、いけばなでは水揚げはとても大切なことです。しかも、テキスト通りにすれば必ず成功するというわけではありません。
大先輩の他流の御家元は水揚げの名人、水揚げをしたら、水があがって行く様子をじーーっと愛情込めて見つめてやることがとても大事なのだと教えてくださいました。命はつながって存在している・この想いを不思議に実感する言葉でした。