いけばな嵯峨御流

4月29日・30日。嵯峨御流華道上野司所 創立70周年記念華展が開催されました。

「さまざまな事 おもひ出す 櫻かな」俳聖松尾芭蕉が、故郷の伊賀の国に帰省した時に詠まれた句の言葉をテーマに、伊賀市文化会館において開催されました。

この度の記念華展では、多目的室での展示、および1200名収容の大コンサートホール舞台に6曲屏風4枚(二双)を用いた島台を飾られました。
29日(日)14時から、大コンサートホール舞台において、約1時間のデモンストレーションを私が担当させて頂き、谷田緑甫理事、伊東美知甫教授に助手をして頂いて、「さまざま櫻」をテーマに大きな朱色の行器(ほかい)の花器に、70周年を寿ぎ次世代へ継承するはなむけの心を込めて、数種類の櫻をいけました。
「櫻」の字は、「木」偏に「嬰(みどり)」と書きます。「嬰」は新緑の若葉のような生命感にあふれると同時に守ってあげないといけない存在を意味し、さらに「貝」は財産を意味する字です。すなわち伊賀上野に70年間根付いた嵯峨御流が、人という財産を守り育てて、櫻のようにしっかりと太く広く根を張って、さらに大きな花を咲かせていかれますように、との願いをテーマに込めました。
デモンストレーションで櫻をいけた後、後方の黒幕が開くと、板屋楓を六角吊り籠花器にいけたものが現れる仕掛けで、櫻と楓を融合させて「雲錦」を表しました。

 

続いて、舞台上に飾られた島台の、拝見の仕方と所作について、少し解説をさせて頂いた後、上野司所の3名の方々と一緒に、拝見の所作を皆様にご覧いただきました。
島台は嵯峨御流初伝に記されている、神殿前の舞楽台や能舞台などに花を飾る時のしつらえであります。神前に献花奉納することが主眼でありますから、花には品格あるもの、名も香りも姿も麗しいものを用い、器には神事に因んだ物など(例えば竹器ならば二柱、浮橋、丸玉垣など)がふさわしく、拝見は上席(神殿前)から左旋に、一作ごとに丁寧に一礼して、順に見廻るのが作法とされています。

 

このたびの華展には、「勅封般若心経戊戌開封法会」「嵯峨御流創流1200年」の御勝縁を祝って生まれた新花「花がさね」も披露され、華やかで喜びに溢れた、ご盛会の記念華展でございました。益々のご発展を祈念申し上げます。

 

ページトップへ