いけばな嵯峨御流

大田の沢のカキツバタ

神山(こうやま)や 大田の沢のかきつばた ふかきたのみは いろに見ゆらむ


藤原俊成の歌に詠まれた大田の沢は、京都の上賀茂神社の摂社である大田神社の境内にあり、古代より深泥池同様に沼地で、京都盆地が湖だった頃の面影を残すものとして、カキツバタ群落と共に国の天然記念物に指定されています。約2000平方メートルの敷地に約25,000株のカキツバタが自生しているという事です。

今年の一番花が4月23日に咲きました!と
お写真と共に嬉しいお便りを下さった友人のお許しを得て、天然記念物のカキツバタの初花を掲載させていただきます。若緑の葉群れの中に、清楚で凛と咲く紫の花は、古の大宮人の心を虜にした事でしょう。

 

今も私たち嵯峨御流の人達は、毎年この時期がくると、必ずと言って良いほどお稽古場でカキツバタのお稽古をされると思います。
嵯峨御流華道芸術学院でも、各クラスともこの時期ならではのカキツバタで、様々ないけ方の実技をご指導しています。
カキツバタは、花の伸び具合、葉の備え方により丁寧な季節の違いを表現し、優雅さの中に生の畏敬と自然の叡智を感じながら、しばし時を忘れてカキツバタの葉組に没頭することが出来るのです。
先生から習うことの中に、必ず自然の状態をよく見て下さい、と言われると思います。
この記事をお読みいただいている皆様も、もし京都へ来られたら、5月15日の葵祭に最盛期を迎えるこの大田の沢をご覧いただきたいと思います。

 

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