「琉球寒緋桜」
日本で最も早く咲くと言われる、亜熱帯気候の沖縄の桜です。お庭の桜を、沖縄司所の先生がお送り下さいましたので、1月27日・28日の研修会で100名余りの先生方にお披露目しました。うつむくように咲く濃いピンク色の姿がとても愛おしく、見ているだけで心まで暖かく幸せな気持ちになります。日本のどこかに、もう春の訪れがやってきているのだと思うだけで心が弾みます。
しかも、いけばなは、実際に足を運ぶことが叶わなくても花を通してその土地の風土に触れることができる、ということは、いけばなの大きな魅力の一つですね。
「南下する桜前線」
沖縄の桜前線は本州とは逆で、気温の下がりやすい北部から南部へと南下するそうです。年間を通して暖かい沖縄でも、12月半ばには少しづつ気温が下がりはじめ、夏に生まれた花芽は気温が下がって1月頃に春のような温度まで下がると休眠から目覚め咲いてくるのだとか。
「琉球寒緋桜と椿を取り合わせて」
小さな瓶花器にいけたものは、研修会の先生方に見ていただいた時のもの。その後、送って頂いた枝全てを、大覚寺供待のお正月花一対の中央にいけました。御題「光」花器を3つつなげて用いています。
12月30日、恒例の、嵯峨御流華務職の先生方によるお正月のいけばな挿花です。
華道芸術学院長ご指導の元、学院教授、学院派遣講師の先生方により、供待やお堂などに晴れやかなお花がいけられました。いよいよ令和四年がお迎えできる、そのような改まった気持ちになります。
お堂の花の写真はご遠慮して、供待と、この日の右近の橘・左近の梅をスナップでご紹介します。平安時代の古式にのっとり、大覚寺には左近の紅梅が植えられております。今にも弾けそうに蕾が膨らんで見えました。
古くから大覚寺では元旦から二日にかけて六座の「修正会」(旧年の穢れを懺悔の行により祓い新たな年の平安を祈る法会)が執り行われております。
令和四年、元日の朝6:30から行われる修正会の第二座に参列させて頂きました。元旦は大雪となり、心経前殿での修正会の後、僧侶の方々が各お堂を回られる間、わたくしは一人で大沢池を見渡す観月台へ。池畔の木々はまるで花が咲いたような見事な雪景色でした。やがて「お口祝いの儀」が行われる時刻になります。宸殿紅梅の間へと渡る回廊から眺めるお庭も見事に雪に覆われ、またとない景色を心にしかと留めておきたく思いました。
厳かな「お口祝いの儀」には、門跡猊下、内局様、寺内を守られる僧侶の方々だけが列席されます。お口祝いでは、僭越ながら華道と総代を代表して門跡猊下に新年のご挨拶の言葉を述べさせて頂きました。
晴れの儀式が終わりましてからは、茶席での大福茶となります。楽しいお茶席のしつらえは、寺内の職員の方が、年末のうちに門跡猊下や内局様方のために心を込めてとりあわされたお道具や、碾きたてのお薄、丸いお昆布と北野天満宮から頂かれた梅干が用意されていて、猊下も皆さまも和かに歓談され、恒例により私が一服点てさせていただき、しばし楽しい時を過ごさせていただきました。
うめだ阪急コンコースウィンドー 2022迎春花YouTube
うめだ阪急さんが作成されたYouTubeです。
うめだ阪急コンコースウィンドー 2022年迎春花への想い
2022年迎春花への想い
「壬寅歳の幸先良い門出を祝う」
一年の計は元旦にありと申します。一年の幸せを願い初日の出を拝み、人にも物にも感謝する、この純粋な和の心・丁寧な暮らしを大切にしてまいりたいものです。地球上の自然に生かされている人間として、互いに寄り添う姿勢と暮らしを謙虚に見つめなおす行動規範「SDGs」を自分の問題として取り組める日常を心掛けたいと思います。
2022年のウィンドーには、窓から曙の空がだんだん明るくなる様子をイメージしました。気が付けばまわりはすっかり明るくなっているように、心を澄ませて明るく暮らすことで、段々と希望に満ちた未来がひらかれていくことを、心から願います。
ウィンドーは向かって右が1号 ウィンドー、左へと順に7号まであります。それぞれの作品解説をウィンドーに書いております。
1号ウィンドウ「元」
正月を寿ぐ代表的ないけばなである、若松「七五三の伝」をいけています。七五三の言葉は、わが国では神代の昔からあるとされ、天神七代、地神五代、造化三代で七五三となり、これが七五三の元だといわれています。七五三は注連、占、〆と同義で、神聖な場所を示す結界をあらわす言葉です。嵯峨御流では、七本の若松を用い、五は中程にいける1本の枝を腹籠と呼び人間の五体に見立て、三は天地人の三才格の枝それぞれに添え枝を加えた陰陽(長短)三カ所の三であらわし、最後に金銀の水引を結んで祝意を一層高めます。
主な花材:若松 水引
2号ウィンドウ「御題 窓」
令和四年の歌会始めの御題は「窓」。窓から眺める曙の空をあらわしました。日が昇るにつれて陽気が満ち、晴れ晴れと明るくなりますようにという願いを込めて、曙色の御題花器「窓」を用いています。窓は内と外をつなぐもの、心の窓はいつも純粋で素直に美しく磨いておきたいものです。
主な花材:大王松 枝若松 蛇の目松 ストレリチア 百合 ドラセナ・コンシンネ 他
3号ウィンドウ「龍吟」
「龍吟虎嘯」”虎が吼えれば自然に風が生じ、竜が叫べば雲が巻き起こる“といわれ、吉祥図柄として対に描かれることが多い“龍と虎”。龍は想像上の、虎は実在の最強の動物。四神では青龍は東を、白虎は西を司る。天は龍、地は虎。水は龍、土は虎。このように陰陽の象徴ともされています。水中や地中に棲むといわれる龍が水に縁があることから、水仙や水草類を取り合わせています。
主な花材:松 枯れコウモリラン ホウキソウ 古木 水仙 水芭蕉 ザゼンソウ 他
4号ウィンドウ「虎嘯」
今年の干支”壬寅”の年は、”新しく立ち上がる”、また”生まれたものが成長する”など縁起の良い年回りだそうです。また、竹と虎は取り合わせの良いものとして昔から絵などに描かれています。この作品で用いた竹は、大覚寺境内の竹林のもので、人の手で間伐をし、間引いた竹を粉砕して肥料にし、成長を促しています。間伐材は境内の飾りやいけばなにも用いて余すことなく使われています。その竹林の中から、偶然虎のような模様のものを見つけていけました。
主な花材:竹 南方竹の根 おたふく南天 万年青 千両 ハラン 他
5号ウィンドウ「初春令月」
令月は、めでたい月・何をするにも良い月という意味があります。元号「令和」の出典である万葉集の歌「初春令月、氣淑風和」の中にも出ています。
この作品は、観葉植物など亜熱帯に生育する植物を用いて、極彩色の琉球びんがた染の晴れ着を、紅の衣桁に掛けたように見立てています。琉球びんがたの特徴の一つは、日本本土の染色がもつ季節感がないこと。春夏秋冬の四季がびんがたではひとつの模様となっているのは、一年を通じて温暖で季節の変化が本土に比べて穏やかな沖縄ならではの表現といえます。
主な花材:セローム コウモリラン サルオガセモドキ ソテツ バンダなど蘭いろいろ 他
6号ウィンドウ「咲麗」
サクラの語源の一つに、古事記や日本書紀に登場するさくらの霊ともいわれる、木花開耶姫の「サクヤ」が「サクラ」に転訛したという説があります。この女神は富士山の守護神で、富士山の頂から桜の種をまいて花を咲かせたと言われています。この作品では、東北地方で育てられている早咲きの桜を用いて、富士参詣曼荼羅に見立て、一番下は三保の松原や東海道等の俗界、山頂は神仏に出会える聖域、中央は俗界と聖域をつなぐ神聖な領域ととらえていけています。
主な花材:桜 ビャクシン 椿 落羽松の気根 桐の木スライス 他
7号ウィンドウ「結」
新年には、古い年のいろいろな難を良い方向に転ずる願いをこめて、南天をいけたいと思います。「南天」が「難を転ずる」に通じ、災難や難関を「転」じるという意味を「輪」に象徴させ結ぶことによってその願いをより強く込めました。また「成天」と書いて円満成就の吉祥に因むとして古くから縁起木、魔除け、厄除けの木として庭に植えられ、祝い事の床にもいけられています。
福を呼び込む観音面を掛けて。
主な花材:南天